今日のわたし
これで私、いいのかしら?

 仕事関係の人が突然二人も急死なさって、まだ50代だったのでとても惜しいと、心からお悔やみしたのでした。この話を友人にしましたら、60歳はひとつの山らしいから、超えられない人がいても決して珍しいわけではないというのです。
 50代は現役の総仕上げの時代ですから、体も気持ちも酷使している人が多いのです。知人二人は過労によるとも思えるのです。
 なぜ体を酷使してまで人は働くのでしょうか。人にとって仕事っていったいなんの役になっているんでしょうね。
 そういう私も仕事の虫みたいなところがあります。仕事に追われていることが、充実した生活と信じています。仕事が少なくなるということは必要とされないからと思っているからです。社会から必要とされたい。だから仕事に対しても人に対してもすごーく誠実。長いことやってきて今がいちばん誠実です。なまけたりずるしたり文句ばっかりいっていられるのは若いうち。私、昔から誠実だったわけではないもの。若い時はいい加減なことしていましたねえ。
 とにかくある日ちゃんと仕事をやろうと思ったのです。与えられた、あるいは来た仕事を手を抜かずにやろうと思ったのです。すると酷使することになります。それが命を縮めることになるんだ‥‥‥。でもでも、せっかく生まれてきたんだったら燃え尽きるまで働くって格好いいかもと私は思う。
 わーっ、そんなのつまんないという人も多いことを知ってはいます。人生一度しかないんだからおおいに楽しまなくっちゃ、という人もいる。
 よく働いてよく遊ぶ人は、本当のところいちばん格好いいと思う。例えば忙しい人なのにいい映画はほとんど観ているとか。映画の話になるとぜんぜんついていけない私は、そういう人の話をただただ感心して聞いていることがあります。そんな時、つまんなく格好悪いのは私なんだとしんみりしてしまいます。ああ、ああ、このままじゃ死ねないねえと思います。突然ですが、映画を観に行こうっと(いつも思うだけなんだ)。
 うちの事務所でコンピューターを新しくしました。もちろん私が使うものじゃありません。若い者が使っています。で、突然聞き覚えのある音が聞こえてきました。えっ、と思って隣の部屋をのぞきましたら「2001年宇宙の旅」の映画をやっています。画面が液晶ですから超きれい、それに音声もとってもいい。映画だってCD-ROMと同じような薄いDVD一枚で観られるんです。感激した私、ここで映画が観られる、しめしめ。
 それから思ったことは、働けなくなったら本を読もうと楽しみにしていたけど、パソコンをもっと勉強しておいたほうが楽しみがひろがる。うん? 結局部屋の中じゃない。遊びじゃない、じゃない。
 だれかに外に連れ出してもらわなくちゃだめな私と思ったので、友達に電話しましたら、今日は歌舞伎を観に行ったということでした。そうか、誘われてもいつも断っているから、もうだれも誘ってもくれなくなったんだった。じゃあ、今日のところは仕事をしておこうと机の前に座ってほっと息をしたのでした。

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