今日のわたし
ごはん時はしゃべり時!

 食事中に夫といろんなことを話します。相談事や1日の出来事、思っていることや感じたことなど、どんどん話します。「長いこと夫婦をやっていると、話すことなんかないものよねえ」と同意を求めてくる人がいるけれど、うちは毎日ちゃんと話すことがあるし、話しているからそういわれると返答に困ってしまいます。
 そう思っている人に「うちはそうじゃない」というと(こういうことは特に)不愉快な顔をされることが多かったので、「そうお?」ぐらいの曖昧な言葉でその場をにごしてきました。だって期待を裏切るのは悪いんだもの。
 で、どんな話をしているのかというと、例えばこの前の朝食の時は、カップに残ったミルクティーを飲みながら夫が、
「新聞で読んだんだけど、あるジャズミュージシャンが舞台に上がったら客席ががらがらだったんだって。メンバーはすっかりやる気をなくしていたので、ほら、柱の陰に熱心なファンがいるじゃないか、といって演奏を始めたんだって」。
 きっといい演奏ができたんだろうなと思いながら、
「私ら(夫は彫刻家です)もそう思わないとやっていけないよねえ、いい話だねえ」
 としみじみした気持ちでいいましたら、夫の目がうるんでいるのでした。彼は見かけがごついのに、私より感激屋で純粋なところがあるのです。
 翌朝、新しいCDが4枚テーブルの上に乗っています。
「これどうしたの?」
 と聞くと、
「ほら昨日話したミュージシャンのCD。ねえあれ(スウェーデン製のオーディオ)にこれ入れてくれない?(CDを入れる扉は手をかざすと開けられるけど、夫は知らない)」。
 柱の陰に熱心なファンがいる演奏を、夫はぜひとも聴いてみたかったのだと思うのです。でもその朝はとてもあわただしかったので、私は聴けませんでした。だからその演奏の感想の話はまだしていません。夫は通勤の車で聴くために持っていってしまいましたし。週末に借りて聴いてみたいと思っています。
 うちの場合、夫婦の会話が情報交換になることも多いのです。たまたま昼間働いている環境が違うこともあるので、出来事もニュースも違う。また、例えば新聞も雑誌も夫と私とでは読み方が違う。意識して情報を交換しているわけではありませんけど、面白いことや感激したことはだれかに話したいじゃないですか。だから夫婦の日常会話が成立しているってことなのだと思う。
 うちでは食事中は新聞を読まない、テレビを観ないと決めていますけど、これは子育ての時代に、行儀のつもりでしていたことでした。その息子はとっくに家から出ていきましたけど、おいしく食事をするために夫婦二人の食卓でも守ってきました。というか、私が強要してきました。だって努力しておいしいものをつくるのだから、ちゃんと味わってほしいと思うもの。で、新聞もテレビも食事中はだめ、がルールであれば、あとは話することしかなかった。それでうちでは夫婦で話すことが習慣になっているんだと思う。
 そうなのよ! せっかく向き合って座るのですから、夫婦の意思疎通のチャンス! なーんて、他人に押し付けるのはいけませんね。夫婦は会話はないものと思っている人は、それはそれです(••••••)。

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