私が高校生だった時代、被服科や家庭科の女の子達は、授業中に化粧アドバイザー(メーカーの美容部員みたいな人だった)に、化粧を習ったみたいだったけど、高校を卒業したら、化粧をするのが娘として当然と社会が考えていたからだったのだと思う。普通科に通ってた私だって卒業して、浪人(大学に落ちたので)してても、化粧をするのをすすめられた。叔母に口紅をプレゼントされたもの。
使い馴れない化粧品を見よう見まねで使ったけど、目的は娘らしくきれいに見せるなのに程遠い顔づくり、例えば眉ずみで眉毛を整えたはずが、まるで西郷隆盛のようないかついのになってしまったり、ファンデーションで白くみずみずしい肌に見せるつもりが、白いお面をかぶったみたいになったりだったけど、最初はそんなものと、まわりは笑わず見ててくれた。やがてだんだん使い馴れていった。
ぬったり描いたりさしたりをすることは、女なんだという意思表示のひとつなんですね。私の時代は高校卒業後あたりを世間が女と認める年齢だったけど、今はその年齢のボーダーラインは個々によるみたい。
また私の高校卒業した時代には、50代の普通の女性は、たとえ化粧をしても目立たないように、口紅もうすめの色にするとかしてたんじゃなかったかと思います。ようするに50代以上は女を誇示してはいけない年齢と世間で思われていたからだったのです。これも今は違います。「なんや、ええ年して、あっかい口紅つけて」なんて私達いわせないもの。
映画『ある老女の物語』のその老女の赤い赤い口紅を、生きているプライドと私は解釈したので、大人の女が化粧するのは、娘が化粧するのとは違うと私は思います。