おしゃれは大事よ
48話 すてきも内容による


 妊娠してる知人が、着たい服(お腹が大きくなる前に着ていた感覚の服)がない。仕事をしている人も妊娠するのに、仕事着としておかしくない服は売ってない、というようなことをいいました。その人普通の体の人が着る、今風のワンピースを、お腹のあたりパンパンにして着ていましたが、まだまだ大きくなるお腹を恰好よく包む服さがしはむつかしそうです。たしかに今風の恰好いい服を着た妊婦に出会ったことがありません。仕事をしている人はどうしているんでしょう。
 ずいぶん前にコム デ ギャルソンのショーで、妊娠しているフランス人だかイギリス人のモデルが出たのを見ました。もちろん妊婦服のショーではありませんで、普通の服を着ていました。それが恰好いいのでした。どのモデルよりすてきでした。
 妊婦の体型は決して美しいとはいえません。そのモデルがすてきだったのは、本人の内容が魅力的だったからなんだと思います。後で聞いたところによるとジャーナリストだとか。
 着る服は大事です。
 実際売っている妊婦服は、やさしい色目が多くて形も洗練されていない。恰好よさを求めるならその手はむつかしい。けれど妊婦も恰好よく見せようとしていないと思う。
 新聞のコラムで、亡くなられた詩人の田村隆一さんが〈女性のスタイルはよくなったのに、きれいなおばあさんがいなくなった。21世紀はもうたくさんという気持ちもある〉と語られていた、と書いてありました。きれいなおばあさんがいなくなったのは本当と思うけど、みーんなと一緒がよくて、そこそこ幸せならいいと思う人が多い時代のせい? 21世紀はその延長にあるのですよねえ。
 知人は'99年に出産します。その子は20世紀の最後の年に満1歳になるのです。

ページトップ
第47話
第49話