おしゃれは大事よ
50話 新色口紅一本の幸せ


 あら、口紅がない! 化粧ポーチをひっくりかえして、ハンドバッグを逆さまにして、車の助手席(バッグを置いてるから)とシートのすきまもさがしたのだけど、口紅が見つかりません。うーん、口紅をぬらないでは仕事に行けなーい!
 こんな大事なことは朝一番に解決せねばならないので、特急で出かける支度をして、まずはデパートの開店時間をめざして家を出ました。デパートの前に車を止めたのは9時40分。開店までに20分もあるのです。いらいらしながら15分間は車の中で待ち、3分前にはデパートの正面に立ちました。開店を待っている人ってけっこういるんですね。
 さて、いらっしゃいませっていって店員の女性たちが入口に立っておじぎをしてくれる脇を通り、めざすC化粧品売場に駆け足。駆け足しなくっても口紅は買えるのに。
 いつもの色をたのんで、ちょっと気になっていた濃いぶどう色のも見せてもらうことにしました。近頃あちこちの女性誌で口紅情報が盛んでしょ。今までの色とは違ったのにしてみたい気持ちはずーっとありましたから、その情報よく見てたんです。でもどこのにしていいかぜんぜーん分からなかった。だって口紅がごちゃごちゃっと並んだ頁が数頁続くんですもの。どれもよく見えるんです。もっとも現物を見ないと決められるものじゃないですけど。
 とにかくついでというか新しい色のも買うチャンスです。落ちにくいという細長いケースのに決めて、もちろん不安だからいつもの色のも買いました。
 車にもどって新しいのをつけてみました。はっきりくっきりして、今風に見えてよいみたい。なんだか嬉しくなりました。口紅一本で気分よくなれるなんて安上がり。
 さてさて、なくなったと思ってた口紅は、仕事机の上にありました。

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