おしゃれは大事よ
第62話 いくつになっても高揚したい


 コム デ ギャルソンの秋冬のコレクションの日、友達と銀座のデパートで待ち合わせをしましたが早目に着いたので、お勉強のつもりで服売場を見ることにしました。たしかコムデのトリコが入っていたなあ、ズッカもあったなあと、フラフラしていたら、なんだか量販店のようにごちゃっと並んだ売場に迷い込んでしまいました。年配の女性が数人ハンガーにぶらさがった服を見ています。そうだ、母に春夏もののニットを買おう、と思いたちました。母は体重が33キロしかなく背も146センチぐらいですから、サイズは5です。単品の紺色の半袖のセーターと長袖のカーディガンをセットにして1組、やわらかいブルーのざっくりした半袖のセーターを1枚買いました。
 実は先日バスを降りた時ころんでけがをした母を、数回病院に連れていきましたが、診察を待っている年配の多くの女性の恰好がよいのに感心したのです。私の母はとても足元にも及びません。よい恰好は印象をよくしますねぇ。もう先がないから新しいものはいらないと、古びた服を季節の変わり目に出してきて着ている母は、いい感じから遠いのです。おしゃれは気持ちを高揚させます。外出できるようになったら新しいセーターを着て遊びに行ってもらいたい娘の私なのです。
 友達と会って、コム デ ギャルソンのコレクションの会場に行きました。取り壊しがきまっているという古いオフィスビルの室内は、壁の表面がところどころはがれていました。モデルさんが歩く細長い台は濃いピンクで、その対比は今世紀と新世紀みたい。
 毎回大絶賛されているコム デ ギャルソン。濃いピンクの台の上にくりひろげられた今回のは、金糸の入ったタータンチェックから始まりました。新しく派手でやっぱりすごくよかったのでした。

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