新 暮らしの絵日記

○月△日 私は農耕民族だもの

 「お肉を食べなきゃだめよ」とあちらこちらから言われる。そういえばお肉が好きな人は元気だ。私のようにしょぼくれていないなあ。TVで動物性タンパク質を摂らないと免疫力が低下すると言っていた。ほんとなんだろうか? 私がお肉をやめた本当の理由は、ただかわいそうだからだった。だって肉牛だって殺されるとわかるとトラックに乗りたがらないと聞くもの。私が食べなければ牛1頭を殺さなくてすむというふうに考えてのことではない。ただただ私は殺されたくないと思うだろう生き物を食べたくないだけ。でも魚は捕獲のとき逃げるのに食べているから、まったくすじが通っていないんだけど。
 地球上の生き物の多くは他の生き物の命をもらって生きてゆくことになっている。だから、人間が鶏豚牛魚などを食べて生きていることは、ごく自然のことも分かっている。でもどうしても魚ぐらいしか食べられない私。私の食べる動物性タンパク質は乳製品、卵、魚類による。お肉を食べないと老化が早いともTVで言っていた。

○月□日 いいレストランよ

 洋菓子を買いに飯倉のキャンティに行った。ずいぶん久しぶりに行った。あそこのレストランで食事することは、とても特別の時代があった。レストランは今も営業しているけど、私らがときどき背伸びして行っていた時は、有名人がお客さんだったりで、出会うととてもうれしかったりした。もっと特別なレストランは代官山の小川軒だった。あそこは私にとってあまりにも高級で、なかなか行けなかった。出版社の人が出版記念の食事会をしてくださって、念願がかなったのだった。きっかけをもらったから、これからは行けると当時は思ったけど、やっぱり自然に行けるようになったのはずーっと後、ある程度年を取ってから。そんな特別なレストランは、今は少なくなっているんじゃないかな? TVに出ている有名なシェフのレストランはいつも満席かも知れないけど、あれは有名というだけ。まあ私が知らないだけなのかも知れないけど。私は私の特別なレストランで、近しい友人と食事会の計画をたてた。秋のお楽しみ。

○月□日 鍋でごはんを炊くもよし

 最近ごはんは炊飯器で炊かない。というか炊飯器が壊れて新しいのを買いに行ったんだけど、おいしく炊けるとうたってあるのはあまりにもお値段がよろしく、その上デザインがごちゃごちゃで気持ち悪く、お値段の高くないシンプルな色合いのを選んで買ったのだった。それがおいしく炊けなかった。なんでだ? その炊飯器で水加減しながら5回は炊いてみたけど、一度もおいしい普通のごはんに炊きあがらなかった。あきらめて鍋で炊くことにした。前に知人に教わったぐつぐつしたら3分炊いて、火を消して10分、火をつけて3分、火を消してむらしを10分の炊き方で十分おいしく食べていた。ある日ぐつぐつしたら中火よりもうちょっと弱火にして10分炊いて、火を消して10分でやってみたらそれもちゃんと炊けた。で、それ以来、炊飯は10分10分に決めている。ゆでたまごは半熟だと火をつけて5分、消して8分。完熟だと8分ゆでて、火を消して5分にしている。こんな風だからタイマーはうちの必需品。




「住む。」No.47(2013年11月 株式会社泰文館発行)
P12-13《新 暮らしの絵日記 第23回 大橋歩》より抜粋

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