新 暮らしの絵日記

○月△日 眼鏡を買う

 前に京都でいい感じのフレームを買った。いつも検眼してもらっている東京の眼鏡屋でそのフレームにレンズを入れてもらったのだけど、出来上がって取りに行ってかけ具合をチェックしてもらっている時「レンズのだいたい真ん中あたりに目があるのがいいんです」っていわれた。その新しい眼鏡をかけて鏡を見たら、レンズ3分の1鼻寄りに私の目があった。つまりフレームとフレームの間が離れている上にフレームが大きいデザインだったからだ。そんな大切なことレンズを入れる前にいってよ、と思ったけど、すでに入っている状態では取り返しがつかない。いわれれば確かにレンズの真ん中に目がある方が自然だと思った。ところでフレームを買う時もそんなアドバイスはなかった。そういえばずいぶん眼鏡を買い替えてきたけど、そんなアドバイスを受けた記憶が一度もない。それでも新しい眼鏡の方が見えやすいのでそれをかけていたけど、鏡で自分の顔を見るたびなんか不自然だと思う。2週間後京都で京都の友人が眼鏡を買いに行くというからついて行った。そこの店のフレームはかなり小ぶりで、かけてみるとレンズの真ん中あたりに私の目がある。うれしくなって眼鏡をまた新調したのだった。その眼鏡を今週の金曜日に取りに行く。楽しみ。

○月△日 着なくなった服

 台所のステンレスのシンクやガステーブルをピカピカに磨くのが最近の楽しみ。シンクの洗い残しの水はちゃんと拭かないとピカピカにならないから、最後にきゅっと絞ったふきんで拭き取るのが仕上げ。台所の収納棚の食器は使わないものは大きいふきんで包んでしまっている。台所は時々もののチェックというか自分なりに普通に整理をしている。タオルやシーツ類はなるべくきちんと畳んでしまっているからそっちの収納棚も普通に収まっている。で、一番駄目なのが洋服棚。着替える季節ものの棚は、すぐぐしゃぐしゃになるし、もったいなくて取って置いている前の服の棚は満杯だ。気になってしょうがない。いつかはなんとかしないといけない満杯の方を、少しだけ片付けた。着るもの、ちょっともったいなくて処分できないものは残して、それ以外のものを捨てるもの、誰かに着てもらうものと分けた。誰かに着てもらうものという誰かは身近な人になる。うちの会社の若い人たちに押し付ける。迷惑なことかもしれないけど一応うれしそうな顔だけしてくれるから、ほっとして満杯棚を少しだけ片付けた気になっている。今日1人あげた服を着ていた。よかったなあと思った。

○月□日 本屋に行く

 代官山の蔦屋に本を見に行った。買いたいものが見つかれば買う気で行った。蔦屋ができる数年前までは南平台に仕事場を持っていた。その前は八幡通りのマンションの部屋を借りて仕事場にしていた。代官山駅の南側の歩いて3分の小さなマンションの1階に仕事場を持っていたこともあったし、旧東急アパートに仕事場を借りていたこともあったから、代官山歴はながーい。だから大きい本屋に行くとなると、勝手知ったる、というほどでもないけど代官山の蔦屋が行きやすい。雑誌2冊とジーンズの本を買って、駐車場を歩いている。ここは前はノースウエストの社宅みたいな建物と庭(雑木林)がある場所だったなあと思う。今本屋だけでも3棟が建ち、レストランやなんかの建物も建っている。本屋の建物の上の方を見ながら代官山はここら辺りが一番変わったと改めて思う。

○月△日 基本歯らしい

 自分の歯がたくさん残っている老人は認知症になりにくいし足も丈夫だとTVでいっていた。ヒャーッ! 私は自分の歯が一本もない。まず子供の時から歯が悪くてよく泣いていた。もともと歯が丈夫じゃなかった。なにしろ私は生後すぐ祖母に預けられ、当時田舎では牛乳も手に入らなかったから、ほぼ重湯(おかゆのスープ)で育ったと聞いている。カルシウムが欠乏していたと思われる。10代も20代も30代も歯に悩まされた。抜歯したのもあったからどんどん自分の歯が減っていった。50代の頃ガラスに激突した。なくなった歯はブリッジという補充と差し歯で補っていたのに激突でよい歯もろともひびが入ってしまった。それからは転落の一途。歯医者は3回も変えて、今は完全にインプラント仕様。だから私は認知症になりやすく足腰も弱りやすいということになるんだ。そういえば歩くのが早いといわれていたのに最近はいわれなくなった。今日の歩きは、会社とショップ2往復だけ。これじゃ足も弱るよ。

○月□日 ソラノクモ

 雲が好き。台風の後の勢いよくもりもりした雲がわいわい空を駆け抜けるのを見ているのも大好き。空が大きくよーく雲の見えるところに旅したいとすごく思う。そういえば私は高校生の頃授業中に雲ばっかり眺めていた。だから勉強ができなかったなあ。卒業できて本当によかった。でも担任からはアホといわれたこともあった。地域で一番程度の高い高校だったから、仲良くしてくれていた同級生はストレートに東京女子大やら奈良女子大やら京都市立美術大学(現京都市立芸術大学)のようなすごい大学に入ったけど、私は目的の某女子美術大学に落ちて浪人したもの。雲が好きだっただけじゃないけどね。主な理由は勉強が面白くなかったからしなかっただけね。あれから年月重ねて、またうっとり、うきうきして空の雲を眺めている。今度ペンネームをつけるなら、ソラノクモがいい。それにしたいと本気で思ったりする。でもペンネームで仕事をすることが見つからないけど。







「住む。」No.52(2015年2月 株式会社泰文館発行)
P12-13《新 暮らしの絵日記 第28回 大橋歩》より抜粋

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