今日のわたし
あっちゃこっちゃが悪いこのごろ

 耳鳴りがします。やばいな、と思っていました。かれこれ5年になりますか。耳とか歯の病気は脳に影響すると思い込んでいる私は、耳鳴りとか歯槽膿漏は怖いんです。どっちも私の問題なのですが。
 実は初めて人間ドックを受けました。60にしてですよ。まわりは40代ぐらいから定期的に受けている人が多いのに。すすめる人も多かったけど、病気が見つかるのが怖くて逃げていたのでした。耳鳴りが始まっても、うっちゃっていたのでした。
 60になったら、なんていうか意識が変わるのですね。こんなに長いこと生きてきたんだから病気のひとつやふたつ、体に潜んでいてもおかしくはないかって思えるんです。このことは60になってみないと分からないことでした。で、夫がかかっている病院のドックを受けたのです。ついこの前のこと。
 聴覚検査で高い音が聞こえにくいと診断されました。耳鳴りが始まった頃から、ぼそぼそしゃべる人の話が聞きとりにくくなっていました。高い声が聞きとりにくいという感じはなかったのでしたが、聴覚は衰えているなと思っていました。母はかなり耳が遠いので、遺伝体質かもと思ってもいました。
 ドックの診断報告の時、気になるところがあったらくわしい診察を受けるようにすすめられましたから、耳鳴りと聴覚の診察を受けることにしたのでした。
 耳鼻科のお医者さんは超美形でした。あらららら‥‥‥大丈夫かしら、信用できるのかしら、な〜んてなぜか妙に不安になってしまったのは、女医さんに対する私の偏見です。で、診察結果は、年齢によるものでした。耳鳴りも聞こえにくくなっているのも、年をとったからなんだそうなのです。治療はないし、進行をくい止めることも遅らせる方法も今のところまったくないとおっしゃるのでした。私、かなりしつっこく突っ込んで聞いたのでしたが、超美形のくせにもぞもぞと素っ気なく、「ない」とおっしゃるのでした。な〜んかね、普通の顔かたちお医者さんに、再診察をしてもらいたいと思ってしまった‥‥‥。もちろんこれは私の偏見です。
 このことを夫に話しましたら、手立てがないなんて困ったことだねっていわないで、
「エーッ、そんな美人の女医さんがいたのぉ、おれ今まで一度もその人にあたってないよ、名前なんていった?」‥‥‥だって。
 友達にこのことを話しましたら「超美形かぁ、信じられないというのもわかるなぁ」といいましたよ。
 今のところ別の病院で診察を受けるつもりはありません。そうか年なんだと、だんだん思えるようになってきて、しわやたるみと同様に、体の内部も老化は当然なんだと受け入れることができつつあります。
 それにしても年をとるのはせつないことですのね。同じ年齢の夫と向き合って暮らしていると、お互い年をとっていくのが目で見えるもの。夫の体の変化は私のことでもあるもの。その上、ついこの前友達が小指の関節に激痛があって、しばらくしたらこぶができたので病院に行ったら、関節リウマチっていわれたというのです。老人に多い病気が人ごとではなくなったのです、私達。
 でも私、10歳若くも20歳若くもなりたくないし、ましてや20代なんかにもどりたくありません。金輪際ごめんです。せっかくこの年までやってきたのです。このまま重ねていくのがいい感じと思う。くたびれていく体からの注意音に耳をすましながら、まずは60代をエンジョイしたいと思うこのごろです。

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