大橋　アフガンは？
由美さん　アフガンは友達のお宅に養子に出したの。それで武蔵小金井でずっと４匹だったんだけどブッちゃんが癌になり死に、ハチも膀胱炎か何かで死んで。それで調布の動物霊園でお骨のままで預かってもらって。それでおばあさん２匹になったので、広尾に引っ越したの。もうおばあさん猫だから外に行かないだろうって思っていた。グレーのココちゃんっていう子が気が変になったの。
大橋　なんで？
由美さん　わかんないの。私が出張で病院に預けていたの。戻ってきたらなんかおかしくなっているんですよって言うんだよ。ずっとニャーニャー言って目が見えなくなっているって。頭の血管が切れたんじゃないかって。
大橋　なにそれ。

由美さん　レントゲン撮ってくださいって言ったけど、レントゲン撮っても脳に異常があるっていうの。それでずーっとないてないてかわいそうだったんだけど死んだの。それで白い猫が１匹だけ残って、この子だけで猫はしばらく飼わないって思ってたのに、六本木のよく行くバーで、マスターがポケットになんか入れてて、「吉本さん、かわいいの見せようか」って言うから、なあにって言ったらこんな小さなモコモコちゃんを出したの。小さくてすっごいかわいいの。
大橋　生まれてすぐの。
由美さん　近所の野良猫が子供を産んだんだって。それでつい持って帰った。
大橋　集まってくるんだね。

由美さん　おばあちゃん猫がそのチビちゃんがピーピーうるさいから大変なの、怒って。先住猫でもオスの方は寛容なのね。おばあさんになりすぎるとだめなのよ。
大橋　それでどうしたの？
由美さん　でも一緒に住んでもらってたんだけど、北向きのマンションだった。ちょっとだけ日当たりのあるところがあってね、おばあちゃん猫はカゴに入れてそこに出しておけば日光浴ができたのね。だけど小さい子は難しい。７階だよ。
大橋　え〜、落っこちたらどうなっちゃうのよ。
由美さん　でもそこのベランダに出しておかないと日が射さないのよ。で、日の当たる部屋を探して東山に引っ越したの。
大橋　そうなんだ。東山？
由美さん　池尻大橋の東山。
大橋　そんな所に居た時あったっけ？
由美さん　うん。すごい古い、要するに動物飼っても怒らないところ。それでイタリア人所有なのでめっちゃくちゃ改装してあって、すごいのよ。台所は大理石の床だよ、せま〜い台所なのに。
大橋　よかったじゃない。

由美さん　狭いのに床は大理石で、システムキッチンにしてあるから一人でぎちぎち。バスルームも普通のお風呂だったところが全部やり直してあって、猫足バスタブが置いてあるの。でもそれだと大変なんだよ、シャワーはチョロチョロとしか出ないから髪の毛を洗うのだってその中で洗わなきゃいけないでしょ。お風呂のお湯をためようと思ったら１時間以上かかっちゃうの。
大橋　へ〜。
由美さん　でもすごいの。イタリアのタイルとバスタブと洗面もものすごくかわいくて。ライトなんかもすっごいかわいいのよ。ただー。
大橋　使いづらい。
由美さん　でもそこに４年くらい居たよ。
大橋　その時は２匹なのね。
由美さん　そう。おばあちゃん猫がさっきのコミケさん（現在飼っている猫）みたいに歩けなくなって、もう22歳だったからね。
大橋　22歳、すごい。

由美さん　それでずっとカゴの中にいるの。体に触ると冷たいのよ。肉がないの。でも死ぬと思って病院に相談に行ったのね。こんな状態なんだけど、このままお家にいたほうが良いですかって言ったら、お医者さんも、それは老衰だから僕のところに連れてこられても何にもできないって。それでそのままにしていたんだけど、なかなか死ねないのね。いつまでこういう状態で生きるんだろうって怖くなってたの。私が原稿書きの仕事をしているからずっと家にいるでしょ。きっと私がいない時に死のうと思っているのにいるからなかなか死ねないと思った。そういう時に『課外授業 ようこそ先輩』っていうテレビに出たんだ。知ってる？
大橋　あ〜、観た観た。
由美さん　第１回目のロケが10月10日にあって、私はロケに行くから家にいなくなるでしょ。そしたらちゃんと死んだんだよ。朝ね、もう最期かもしれないと思って、メイちゃん行ってくるね、これでさよならだねって言って出たの。夜帰ってきたらきっと死んでるなって思って。そしたら朝と同じかたちでカゴの中で冷たくなってた。
大橋　そういうもんなんだね。
由美さん　あっぱれな老衰。人間だと100いくつかな。
大橋　そうかー、長いねえ。由美ちゃんの22年間と一緒だったわけだから。
由美さん　そう。
大橋　それは由美ちゃんが何歳から何歳まで？
由美さん　だから浦島太郎で、子供達からもらった時からだから22か23歳くらいだね。
大橋　だったら44か45歳になっちゃうじゃない。
由美さん　だって東山ってだいたいその頃だもん。
大橋　すご〜い。