吉本由美さんは猫と暮らしてきた。 大人のおしゃれ
第3話 利口すぎる猫

由美さん すごいっていうか長生きよね。だって、片目がないんだよ。でも目が悪いから危ないことをしなかった。外に行かなかったね。他の子たちは車にはねられたりするんだよね、そういうことがなかったから長生きしたのかなって。
大橋 それでそのあとは子供だった子と一緒に。
由美さん そう。東山から千駄ヶ谷に移ったの。
大橋 でもそこはマンションだったんじゃない?
由美さん うん、秘密で飼ってた。
大橋 写真があったよね。その子は我が儘だった?
由美さん というか、すごいワイルドで。
大橋 そうだよね、その子だよね。

由美さん かくれんぼとかして一緒に遊ぶんだけど、本気で私怖いの、見つかるのが。頭が良くてね、私1人だからトイレのドアを閉めないで使ってたの、そしたらそこがオシッコするところだってわかったらしくて、ある時ター坊が便器に座ってオシッコしてたのを見てびっくり。
大橋 そういう子いるんだってね。
由美さん うん、ただ流さない。
大橋 そりゃそうだよ、あはは。今だったら自動で流れる。
由美さん うん。
大橋 へ〜。その猫は目黒の白金台のところまで行った?
由美さん うん。ター坊は14年間6階と7階でしか生活していなかった。それでカラスや雀しか見てない。死ぬまでに土を触らせたいなって思って。白金台は1階でお庭がついてるから引っ越して。
大橋 そうそう。あそこは何年くらい居たの? ここに来る前ね。
由美さん 14年くらいかな。
大橋 あそこは猫が飼いやすいところだったの?

由美さん うん。みなさん犬飼っているし、猫飼っているし。古いところなので別に誰も何も言わない。犬を散歩させてから抱っこしてロビーで猫を抱っこしている人とおしゃべりしてるんだもの。管理人さんは、私が外出する時猫を朝出して行くでしょ、すると夕方ちゃんと取り込んでくれてる。
大橋 すごい、そんなの聞いたことがないよ。
由美さん 隣のお部屋のおばさんなんて、うちの子がベランダに遊びに行くらしくて、ダンボールでお家を作ってくれてた。
大橋 その時代は心配しなくていいからよかったね。でもその時は?
由美さん ターちゃんが1匹。でもそこにススという野良猫のガリガリに痩せた子が来ちゃった。あまりにもかわいそうなので、1年かけてなつかせてお家の中に入れたの。

大橋 大丈夫だったの?
由美さん だめ、オス同士だったから。ススを中に入れたらターちゃんカンカンになって外に行っちゃったの。
大橋 ウソ!
由美さん 家の中にいないで、ずっと外に行っちゃったの。でもご飯は食べに帰ってくるんだよ。それでちょっとここで寝たりするけど、すぐにプイって外に行っちゃう。
大橋 へ〜。
由美さん ススは白血病だったんだよね、やっぱり野良猫だったから。それで家の中に入れてひと冬越せたんだけど、だめになって死んじゃって。それでター坊もよく分からないんだけど背骨が折れちゃったの。

大橋 なんで?
由美さん 最初、交通事故かと思ったんだけど。夜中に庭の向こうからニャーニャーって声がするのよ。「ターちゃん早く帰りなさい」って言ってもずっと向こうでニャーニャーっていうの。だからどうしたんだろうと思ってそこに行ったら横になっているのよ。「早く帰ろう」って言って抱き上げたら下半身がぶらぶらになっているの。
大橋 やだ〜。

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