子供を小脇に抱えながら
ガラス工房というと炉があって、長い棒に溶けたガラスをまきつけて回したり、吹いたり。そんな大がかりな場所を想像していました。でも廣田さんの工房は4畳ほどとこじんまり。
「私が学生だった頃、家や暮らしの傍らにガラス工房を持つスタイルが世界的に起きました。当時参加したワークショップで、アメリカや北欧から招かれた女性ガラス作家たちが何人も『私のガラスのいちばんのファンや批評家は自分の子供たち』とおっしゃるのを聞いて、とても素敵だなあ、と」。廣田さんは自分も子供を育てながら仕事をしたい、と思ったそう。
「場所を取らず、扱いが比較的ラクなバーナーワークなら子供を小脇に抱えながらでもできると、方向を定めました。まだ結婚相手もいないうちから(笑)。でも、実際は個展をする時に子供を置いていっちゃっていいのかな?とか、なかなか冒険ができないタイプ(笑)。個展も去年がはじめてでした」。
自然と心地よい音がモチーフ
工房から居間に移動し、アクセサリーの組み立てを見学していると、外は突然の夕立に。雨がざあざあ降ってきました。
「こういうときいくらでも庭を見ていられる」と廣田さん。モチーフやデザインが浮かぶのはこんなとき。雨の日に葉っぱから落ちるしずく、水面の揺れ、植物の細部など、見飽きることのない自然の断片を自分の身体とガラスを使って表現したいと言います。
「母が家でピアノの先生をしていて、小さい頃から音楽の中にいたからでしょうか、耳に心地よい音楽を感じでいたいんですね。透明なガラスのきらめきはそれにもとても近いんです。アクセサリーをつくる時は音を置くようにガラスを置いてつなげていますね。ここにリズム、ここにシャープとアクセントを置いて、と」。
廣田さんのガラスのアクセサリーを身につけることは自然や心地よい音をそばに置くこと。でもこの透明なアクセサリー、実はメジャーなものではないらしいのです。
「私はいちばん追求したいものなのですが、目立たないとか、色がないのは寒々しいとか思われる方がいらっしゃるみたいで」。いやいやそんなことはない!ということで次回第2話は実際身につけ、それを証明してみようと思います。