これ（左写真）は私（大橋）がつくった『大人のおしゃれ17』の手づくりのダミー本です。最後の号になりますので、ダミー本を見ていただき今回の内容をお知らせします。

　どういう面白いものを取材させて頂けるか、情報を集めたり偶然出会ったりした中から選ぶのが『大人のおしゃれ』をつくる始めです。56頁の中にそれらと面白いと思ったものや記事をどのように組むか、まず紙に書いて考えます。順番は大切ですから、何度も置いたり離したりけずったり。決めた取材で良いのかどうかもよくよく考えます。それから取材を申し込んで、写真を撮らせてもらい、伺ったお話をボイスレコーダーに取らせてもらう。写真を雑誌として面白く見てもらえるよう考えながら貼り付けたダミー本を作ります。空白に入る文字数で取材で伺ったお話などを書いて、表紙裏表紙にも写真を貼り付けて、ダミー本を見本に頁のデザインをしてもらいます。ダミー本づくりが私の雑誌づくりの基になります。

　この号の取材は、まず『仕事を続ける人』です。『服』のお仕事をされている『how to live』の勝屋まゆみさん、セレクトショップ『SUSCON』を続けていらっしゃる鵜飼弘子さん、パタンナーの平野園子さんにお願いして取材させて頂きました。何故このお仕事を選ばれたか、長く続けていらっしゃる理由や魅力を伺いました。

　ある展示会でお隣になった『ラボーラ』さんの、ポルトガルの商品が魅力的で、お話を伺いました。お隣にならなかったらポルトガルに興味を持つ事もありませんでした。「よかったです」と申し上げたら「僕たちはこの本に出会わなかったら、ポルトガルを面白いと思わなかったかも知れない」というような事をおっしゃっていました。
　下の写真がその本です。本の著者Mizette Nielsenというオランダ人の女性は、1970年代に旅行で立ち寄ったポルトガルの織物の街の織物に魅せられ、そこに留まり、織物の継続と普及に努力を重ねて今も頑張って続けておられるそうです。

　『ラボーラ』さんにポルトガルのお話を聞くうち、ポルトガルから伝来したお菓子に興味を持ちました。私たちに馴染みのカステラはポルトガルのお菓子が元だったと、偶然知ることがありました。そこで渋谷と京都のポルトガルのお菓子屋さんにたどり着きました。
　渋谷にある『ナタ デ クリスチアノ』では〈パン デ ロー〉と呼ばれている、中がとろりとした半熟の焼き菓子と、京都の『カステラ ド パウロ 』では〈パォン デ ロー〉と呼ばれている中まで火が通っているお菓子が、日本のカステラの元だったそうでした。

　こうやって興味のあることを覗き込むとそこにはいくつも新しい興味ある事に出会えるのでした。こういう面白い事に出会うから『アルネ』から始めた小さな雑誌を続けてつくってこられたのでした。

　気がつけばおしゃれな知人友人達はスニーカーを愛用しているのでした。『SUSCON』の鵜飼弘子さんや『横尾』の横尾光子さんはずいぶん前からスニーカーしか履いていらっしゃらなかったと思います。京都の雨堤直子さんや香川の十河さとみさんはダニエラ グレジスやコム デ ギャルソンやポール ハーデンのお洋服にスニーカーを履いておいでです。

　糸をこま編みしてアクセサリーをつくっている山田さきこさんの造形が素晴らしいのです。色使いも面白くてすばらしいのです。編んでいらっしゃるところを見せてもらいました。予想もしないかたちをつくり出していく山田さんです。

　『コム デ ギャルソン・コム デ ギャルソン』と『ダニエラ グレジス』の新しい服を載せさせてもらってきました。大好きなこの2つのブランドにご協力願えた事は私誌のような『大人のおしゃれ』には本当にありがたいことでした。

　この17号の表紙が長い事飾らせてもらった、もたいまさこさんじゃないのは、撮影日の前に体調を崩され（その後回復なさいました）、断念。残念で仕方がありません。毎号撮影の日はいろんなお話を伺えてお会いできるのが楽しみだったのです。

　2002年に季刊誌『アルネ』を発行して30号で辞めました。その後2010年から年2回発行してきた『大人のおしゃれ』ですが、この17号をもって終刊といたしました。ご愛読下さって本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。そしてこの17号もどうぞよろしくお願い致します。

　※『大人のおしゃれ17』春と夏号は３月１５日に発売いたします。
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