どちらも横長のグレーのバッグ。持ち手やくっついているものがそれぞれにおもしろく、選ぶのに迷います。(右)本体/縦×横=約23×40cm (左)本体/縦×横=約24×47cm
片面はグレーの帆布と赤い革。もう片面はグレーの帆布にグレーの革のコンビです。
本体/縦×横=約40×34cm
2つの円が微妙にずれて重なっているバッグ。「どこでだったか、堅い椅子に座ったことがあり、座布団みたいなバッグがあればいいのに、と思ったのがきっかけでつくりました。
直径約39cm
取材させていただいた日の鈴木笑子さん。バッグは肩かけ、斜めがけ、さらに後ろがけもできます。後ろがけすると、襟のようでかわいい。
襟元につけていらっしゃるアクセサリーも鈴木さんの作品です。
バッグが目に飛び込んで来た
「今日はイオグラフィックで鈴木笑子さんにお会いする。いろいろお話を伺おう」と地下鉄の駒沢大学駅を降り、事務所に向かって歩いていた時のことです。特集担当の目に、なんとも気になるバッグが飛び込んできました。大きなバッグから黄色の三角や青い四角が飛び出して見えます。
「わー、もしかして?」。バッグの持ち主は水色のふんわりしたおしゃれなブラウスを着ておいでの女性です。「もしかして?」は「まちがいない」に変わり、お声をかけることにしました。「失礼ですが、鈴木さんでらっしゃいますか?」。みちばたで声をかけられた鈴木さんは驚いたと思います。「はい」と返してくださった表情は、けげんそう。でもそのお名前のとおりに笑顔でもありました。
きっかけは銀座で
お話を伺って最初にびっくりしたのは、「銀座で声をかけられた」ことが今のようにバッグをつくるきっかけになったというエピソードでした。
20年ほど前、鈴木さんが銀座を歩いていたとき、ギャラリーを営む方から「おもしろいバッグだから、つくってみませんか?」とお誘いを受けたというのです。鈴木さんがつくるバッグには、声をかけずにはいられない魅力があるのです。
当時から、自分の服やバッグ、アクセサリーを手作りしたり、既製品に「トッピングしたり」して楽しんでいたという鈴木さん。でもそれはあくまで自分が楽しむためで、最初はためらいもあったそう。個展が実現したのはだいぶ経ってからのことですが、今では楽しみにしてくださる方も増え、年に2、3回のペースでバッグを中心に展示をなさっています。
最初から完成形はつくらない
今回イオショップ&ギャラリーでご覧いただくのも、ひとつひとつかたちも素材も、その組合わせも異なり、引いて見てインパクトがあり、近くに寄っていろいろ発見がある、楽しいバッグばかり。
バッグをつくるのにコンセプトやテーマはなく、しいていえば、「日々の暮らしの中で、そのときそのときおもしろいと思うものをかたちにしている」とおっしゃる鈴木さん。自宅近くを散歩していたとき、自転車で走り抜けて行った女の子が斜めがけしていたフープ(大きな輪)がかわいいな、と感じたらそれをイメージして。ホームセンターに並ぶゴムホースがカラフルでいいな、と思えばバッグの持ち手に。ビニールシートを型抜きしていて、抜けきれないところがあれば「このままでいたいのね」とそのままにして。ファスナーをつけるのは難しいと悩むのではなく、「布の上からはりつけてしまおう」と逆転の発想で。最初から完成形はなく、型紙もほとんどなし。鈴木さんの枠のない「おもしろい」は、バッグを持つ人にも伝わり、うきうきできるのだと思います。
「自分はつくる過程がとにかく楽しくて、完成したバッグの写真を撮って残しておくこともしないんです。でも、いつだったか街で見かけた方が、おもしろいバッグを持ってらして。『あれ、あれは私が前につくったものかな?』と思ってお声をかけたら、やはりそうだったんです」。
東京というビッグシティのなかで、バッグが縁で声をかけられたり、かけたり。すごいことだなあ、と思います。そんな鈴木さんのバッグが今回は30点ほどイオショップ&ギャラリーに並びます。ぜひお運びいただき、手にとって見ていただければと思います。
特集では、そのなかから約10点ほどをご紹介いたします。
※鈴木笑子さんのバッグは、すべて一点ものになります。価格は¥20,000台〜¥40,000台を予定しています。