原毛の魅力を生かし、
新鮮に仕上げる
今週木曜日から始まる竹崎万梨子さんのストール展。
第1話の赤やピンクのストールに続き、第2話では羊の原毛のナチュラルな色あいや手触りが楽しいストールをご紹介いたします。
こちらも身につけると元気になれる、気分があがるものばかり。原毛の魅力、エネルギーを大事にしつつ、糸の紡ぎ方、長さや幅の設定、織り方のリズム、仕上げの縮絨のかけ方などいろいろなところに竹崎さんの洗練された旧びないセンスが生かされたストールばかりです。
(左)ウェンズリーディール、ウェリッシュマウンティン、チェビオット、シェットランド。どれも貴重な羊の原毛(フリース)からつくったナチュラルカラーのストールです。「“美しいな、きれいだな”と感じたフリースを選びました。だからこそそれぞれの個性を生かしたい、そうしないともったいないと思いました」と竹崎さん。光沢のあるグレー、ふんわりした亜麻色、羊毛では“黒”と呼ばれるこげ茶、柔らかな白…。自然の色ってあらためてすごい!
(左)やさしい亜麻色が新鮮な、シェットランド羊毛のストールです。43×192㎝。しなやかでとても軽く、ふわっとしています。
(右上)柔らかさと弾力をあわせ持ち、肌触りのよいシェトランドは、白、グレー、茶、黒などさまざまな毛色をしていることでも人気があります。今回竹崎さんがいつになくひかれたのがこの亜麻色の原毛。「今年はこの色!」と思ったそう。
(右下)紡ぐとベージュ、ライトブラウン、ブラウンの自然なグラデーションの糸になりました。
(左)毛がくるくるしていて、光沢のあるウェンズリーディール羊毛のストール。「コートの襟元につやっぽいのがあるときれいかなと思ってつくりました」。28×177㎝
(右上)ウェンズリーディールの原毛には個体差がありますが、ラグやアウターなど肌に近くないアイテムに使われることが多いそう。「でもこの原毛はとても柔らかかったんです。そのままを生かしたいと思い、機械は使わず様子を見ながら手でほぐしていきました」。
(右下)ほんとうにつやっ。これぐらいの小ぶりなサイズだとカジュアルにも使いこなせてよさそうです。
(左)レースができるぐらい細く紡いだシェットランドのストール。ナチュラルなこげ茶を微妙な濃淡に分け、ボーダーに織っています。49×208㎝
(右上)「細く紡げるのは原毛が繊細だから。シェットランドカラード(色がある)のこげ茶は赤みがかったものが多いのですが、これは黒に近いこげ茶で珍しい。地味ですがいい羊だと思います」。これは織り上がったばかりのストール。ちょっと落ち着かせてから縮絨をかけて仕上げます。
(右下)紡いだ糸を小管(こくだ)という糸巻きに巻いたところです。この小管を杼(ひ・シャトル)にセットして緯糸として使います。
(左)今回の展示の中で一番大きく厚みもあり、コートのようにあったかなストールです。糸は白いウェリッシュマウンティンと亜麻色のシェットランド。70×245㎝。
ニットワンピース(紺・M)と。モデルの竹谷さんは身長164㎝。
(右上)「品種改良されていない古い品種で扱いづらいけれど、だからこその魅力を秘めている」というウェリッシュマウンティン。「ぱさぱさしたケンプ(空洞の硬い毛)が混ざっていたりするのが私的にはたまらないんです(笑)これが少し混ざっているから雨をはじくし、軽いし、ボリュームが出るのだと思います」。羊が暮らす場所に思いをはせたりするようです。
(右下)山形斜文という織り方。竹崎さんの導き糸を残す、残さないの選択は絶妙です。
(左)白いチェビオットの原毛を太めに紡いで織ったストール。冬にきりりと映えそうです。27×172㎝。a.の今シーズンの
Wショートコートと。
(右上)原毛は一頭分、半頭分をぎゅっと丸め、布に包まれた状態で届きます。なかにはこんな角のようにくるんと尖った毛も混じっています。
(右下)竹崎さんはチェビオットの魅力を“ぽん”とか“ぱふんぱふん”と表現します。弾力があってしなっとならずカジュアルな雰囲気に仕上がる、ということのようです。
(左・右上)弾力があるけれどしっとりしている毛質が魅力のシェトランドを藍色やネイビーなど5色に染め、混ぜ合わせながら糸をつくって織りました。明るくて深いブルーのストールが顔をぱっと引き立てます。29×165㎝。
(右下)5色を混ぜ合わせたブルー、ナチュラルな白、2度染めした深い黒。工程や羊毛の種類が違っても、竹崎さんのストールはどこかモダンできりりとしています。
(左)上の白と同じチェビオットの白を黄色に染めた大判です。明るくて上品ないい色。日射しのある日はコート代わりに、底冷えの日はコートの上に。昨年のグリーンに続き注目を浴びそう。1枚しかないのが残念! 71×243㎝。
(右上)原毛を染め、カードをかけて毛並みをならしたところです。ふわふわで“ぱふんぱふん”。これから糸に紡ぎます。
(右下)ストールは織り上がってから縮絨といって洗いをかけ、生地になってようやく完成です。写真は縮絨前に経糸を整えているところです。
(左)最後にご紹介したいのは、ヤクのグレーのストールです。モンゴルの標高4000〜6000m級の厳しい自然の中で生きるヤクの内側の毛はしっとりとしてとても柔らか。繊維が短いため紡ぎにくく織りづらいと言われますが、竹崎さんは出会った原毛に一目惚れ。負担をかけないように紡ぎ方や織り方を工夫して仕上げました。ネイビーの山形斜文はカシミヤで。保温力抜群でおしゃれなストールはきっと誰かのこれからの冬に欠かせない一枚になるにちがいありません。83×150㎝。
(右上)ぬめりがあってしっとり。バイアスに使うとドレープがとてもきれい。落ち着いた雰囲気です。
(右下)くるっと首元にカジュアルに巻いても。
※ご紹介したストールの販売価格は¥42,000〜¥160,000(税別)を予定しています。ストールはすべて1点ものとなりますが、イオショップ&ギャラリーにはここでお伝えできなかったストールもまだまだいろいろ展示いたします。新しい試みもちょっとご覧いただきたいと思っていますので、ぜひお運び下さい。
取材:田中真理子