はじまりはカディ
「ツォモリリ」は北インド・ラダック地方の標高4000mに位置する青い湖。今回紹介するのはその名をつけたブランドが扱うインドの手仕事アイテムです。「
ツォモリリ」を運営するおおくにあきこさんたちは、2010年からインドの小さな村の学校の壁に絵を描く「
ウォールアートフェスティバル」を開催。現地に滞在し、生活するなかで出会った手仕事アイテムを日本に紹介しています。そのきっかけとなったのが最初にご覧いただくカディです。
「インドの街を人力で走るリキシャー(日本の人力車が由来です)のおじさんたちが首にひゃらりと巻いていた布がかっこよかったんです。ハードワークなおじさんたちの汗を吸って、すぐ乾いて、タオルにも、日よけにも、ホコリよけにもなる。布の力を感じ、自分たちがまず欲しくて「それは何という名前ですか?」とたずねることから始まり「カディ」と呼ばれる布と知りました。そして実際使ってみたら手放せなりました。雑雑とした布ですが、手触り肌触りもよくて」。
長年女性誌のライターとして暮らしまわりの取材を重ねさまざまな手仕事を見てきたおおくにさんにとって、カディは日本の生活の中でも十分用をなし愛される布と思えました。
カディでシャツをつくりたい
インドは世界で屈指の綿の産地。カディはそれを使って手紡ぎ・手織りでつくられた布です。しかし他の多くの国と同じようにインドでも工業製品と手仕事品との二極化が進み、本来の意味でのカディは年々少なくなっているそう。おおくにさんたちが現在取り扱っているのは首都デリーから車で5時間ほど離れたウッタル・プラデーシュ州で紡ぎ手・織り手を育てているNGOを中心につくられているカディ。横糸はもちろん、機械紡ぎが多くなっている経糸(たていと)もすべて手紡ぎ。不均一な糸が織りなす布はそれゆえ吸湿性も風通しも良く、やわらかな表情をしています。
「日本に持ち帰ったカディはストールに、バスタオルにと使っていただけてとても評判がいいんです。心地よい布なのでTシャツのように着られる服に仕立ててみたいとずっと思っていましたが、今回はようやくそれが形になりました。湿気が多く、暑い日本の夏を涼しく過ごすために使っていただけると嬉しいです」。
縫製を担当してもらったのは以前から知り合いのラジャスターン州にある工房。こちらはもともと藍染が専門、オフホワイトのカディを藍色に染めた服も仕上がりました。染色に詳しい方の中にはインドの藍は“憧れの藍”という方もいらっしゃる。パッと鮮やかな色をしています。