新 暮らしの絵日記

○月△日 気が小さい

 チェコのプラハに在住のshinoさんは、磁器のカップやビーズのチョーカーを作っておられる。年に2回ぐらいチョーカーの展覧会を日本でなさるので、その度というわけではないかも知れないけど、日本に帰ってこられる。来週からうちのショップで展覧会をしてくださることになっている。先月は熊本のギャラリーでもされていた。だからいまは日本にもどっていらっしゃる。外国に住んでいる日本の人たちは日本をどう思っていらっしゃるんだろうなぁ。例えば東日本大震災や津波や、そのことによって起こってしまった福島原発事故なんかを。と思いながら展示にshinoさんが使われる新聞紙を、今日はまとめて袋に入れた。その後でそれを車のトランクに。展示の日に持って行くのを忘れたら大変な事になるから。気が小さい私はなんでも早々用意しておくタイプ。タクシーに乗ったとたん、バッグの中からお財布を取り出してにぎっている私。目的地に着く前にメーターを見て財布からお金を出し、手に握っている私なのよねぇ。

○月△日 気がつけば

 さっき電話で話した大学時代の友人が、私の事を四角く生きているという。友人は楕円に生きているんだそう。つまり友人から見ると、私は生き方に柔軟性がないそう。真四角とまではいかないとは思うけど、かなり真面目な人間だとは思っているから、反論はできない。23歳からずーと仕事をして、それで生活をしてきた。一時も休まずの48年間だ! うわーっ! 改めて年数を数えてみて、我ながら長い!と思う。それだけたくさんの人から仕事を頂いてきたという事。運もよかったという事。
 私は26歳で結婚して27歳で子供を産んだ。主婦も親も私はやることになった。私の母に子供が17歳になるまで手伝ってもらったけど、その後は仕事と家事を真面目にやってきた。それを友人は四角く生きているというのだと思う。気がつけば一緒に遊ぶ友人がいない。それも四角いせいなんじゃないのか。

○月□日 母がいたから私も息子も

 母の七回忌の案内が青山のお寺からきたのは夏頃だった。母は12月に亡くなっていて、その前に七回忌はやらなくてはならない事らしいと知る。母はそのお寺で永代供養として納骨堂に入れてもらっている。母は離婚をしているし、一人子の私は結婚して夫の姓になっているので、永代供養を選んだのだった。七回忌は私と息子夫婦と3人ですることになった。参加が3人なんてめずらしいかも知れないと思う。でも1人じゃなくてよかったと思う。息子がいてそのお嫁さんがいてくれて、私はよかったと思う。帰りに3人でデパートのレストラン街で、天ぷらと迷ったけどうなぎを食べる。少ないけど家族がいてくれて、母の供養ができて少し幸せな気持ちになった。その後は会社に帰って普通の仕事をした。今日も忙しかった。




「住む。」No.40 (2012年2月 株式会社泰文館発行)
P10-11《新 暮らしの絵日記 第16回 大橋歩》より抜粋

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