紳士物の靴下工場
当時から今に至るまで「アンティパスト」のハイゲージの靴下をつくっているのは同じ工場。
「百貨店向けの紳士物のビジネスソックスの工場で、編み機にはいくらでも柄を編む機能がある。でもフルに使ってはいませんでした。私たちが柄ものをつくりたいと相談したとき社長さんは最初『できるかな』と思ったそうです」(カトウさん)。
靴下、特に紳士物でははき心地や丈夫さが求められ、その点では糸つなぎがない無地がいちばんです。
「社長は実用性と柄の兼ね合いのむつかしさがわかっている。でもそれをあえてやろうという発想が素晴らしいと言ってくれて。課題は他にもたくさんありました。同じ物を何千何百と生産する紳士物と、流行も色あいも多様な女性物とではロット(製造時の最小単位)がぜんぜん違う。用意のある糸の色数も少ない。手間も時間もかかるので高くつく…。でも最終的につくってくれました」(カトウさん)。
「荒れたものづくりがきらいで、研究熱心な社長さんなんです。今も100%コットン素材で伸縮を出す方法とか、夏に涼しいウールとか、新しいことを次々に見せてくれます」とジヌシさん。
繊細な色合わせで編まれた縞、チェック、動物、植物。どうしても柄に注目が集中しがちな「アンティパスト」の靴下ですが、第1話で横尾さんがおっしゃっていたようにはき心地もいい。それには裏付けがありました。