マチのない、ほぼ正方形、少しだけ縦長のバランスのいいかたちをした手さげです。ウールの紺と麻の黒の布で構成されていて、そこにドーナツのようにステッチが施されています。さらに近づいてみると、ステッチは単調な円ではなく、毛羽立つようにしゅっしゅっ、と描かれているのがわかります。糸の種類も太かったり、細かったり。へぇーっと見入ってしまいます。
上の手さげのもう一面です。こちらは黒と白の布に、洗い晒して切りっぱなしの朱色の布がざくざくっとアップリケしてあります。寄って見ると白い布には白い糸で、黒い布には黒い糸でちくちくしてあるのですが、針目は縦に並んだり、斜めになったり。ピッチも不揃いぎりぎり。縦×横=約44㎝×約42㎝。¥24,000+税 この手さげは受注制作後のお渡しとなります。
こちらもひとつの手さげの表と裏というか両面です。一面はベージュのウールとシーチングの布をあわせ、それぞれに違う流れのステッチをかけています。もう一面はグレーのウールとシーチング。シーチングにはうろこのようなアップリケがついています。「10月の展示会なので、秋冬を意識してウールを素材に使っている」手さげはどれも暖かい感じがします。縦×横=約41㎝×約41㎝。¥24,000+税 この手さげは受注制作後のお渡しとなります。
白い糸で運針ステッチした薄手の濃紺のウール地を4パーツつくり、はぎあわせた手さげ。マチ有りです。2つの持ち手がマチ側についていて、持つと立体感が出ます。裏地は太い細い2タイプのストライプ。リバーシブルで使うことができます。縦×横×高さ=約19㎝×約35㎝×27㎝。¥20,000+税 この手さげは受注制作後のお渡しとなります。
この4枚の写真はひとつの手さげの表側2面と裏側2面です(表と裏はどちらでもいいのですが)。白い麻布にはぐるぐると運針ステッチがしてあり、こげ茶のウールには赤い一本のミシンステッチが入っています。持ち手が一本なのもかわいい。1点ものにつき現品限りとなります。縦×横=約28.5㎝×23㎝。¥14,000+税
おもしろおかしくつくりたい
あさって10月9日(木曜日)からイオショップ&ギャラリーで開催予定の藤田真由美さんのバッグ展。第2話ではステッチバッグをご紹介します。
ステッチバッグは藤田さんがデザインから制作まですべてを手がけています。今回は10点ほどが展示されますが、まずは到着したばかりの手さげをいくつかごらんください。
手さげはどれも四角でふつうのかたちをしています。でもどんどん寄っていくと布合わせやステッチが楽しくて目が離せなくなります。
ぐるぐる回っている運針もあれば気ままに走ったり流されているような運針もある。ひと針のピッチも糸の太さも違います。切りっぱなしの布をざくざくっとぬいつけてあったり、裏地がちょこっと外側にはみ出して見えたりもする。運針や手づくりといったことばから連想する圧のようなものをするっとかわしたような軽やかさがあり、だからこそ今のカジュアルな服にもなじみます。藤田さんはそれをちゃんと意図してご自分なりのステッチバッグをつくっているようです。
「こういうのやっていると無心になれるんですけれど、ちゃんとしなくちゃ、とは思っていないんです。ステッチもざっくりあっち向いたり、こっち向いたり糸を微妙に変えてみたり。なるべく軽い感じ、おもしろおかしい感じが出るようにしたいと意識しています」。
バッグにあらかじめ設計図のようなものはなく、パーツになる布に先にステッチをして準備。それを見てどれとどれがあうか組み合わせていく作業をするそう。
犬のしつけ教室がきっかけ
「大阪の人間なので話に落ちをつけたがる」と言う藤田さん。ステッチバッグをつくり始めて13年ほどになりますが、布や糸でものづくりを始めたきっかけは「飼い始めた犬をしつけの教室に入れたくて、そのお金が欲しかったから」だったと言います。
服が好きで高校卒業後ファッションの専門学校に行ったものの1年で中退。ずっと何かつくりたいという思いはあったけれど、20代は書店のアルバイトであっという間に過ぎ、15年前に出会いがあって結婚。同時に飼い始めた犬がしつけがなっていなくてたいへんだったのだそう。
「ちょうどインターネットでサイトを立ち上げ、そこで自分のつくったものを紹介したり販売するのが急激にブームになった頃だったんです。しつけ教室の資金のために、当時姉がやっていたサイトでステッチ入りのブックカバーをつくって紹介すると予想以上に反響がありました。びっくりする反面、それをきっかけに自分は本当は何がつくりたいのか、何が個性なのか、何かできるのか考えるようになりました」。
手のひらにはいるサイズの布が好き
そうした中で、「ネットの世界を出て、実際に街でショップやギャラリーを切り盛りしている人たちとの共同作業で自分のつくったものを紹介したい」、「今の自分には、手のひら中に入るぐらいの大きさの生地に絵を描くようにステッチや色あわせをして、最後になにかかたちになるのが表現しやすい。実用とアートの間ぐらいのものをつくりたい」という思いがはっきりしてきたという藤田さん。今のバッグづくり、そして年に2回の展示会を中心としたものづくりにつながっていきます。
現在は幼稚園に通うお子さんを育て、藤田さんにものづくりをしむけたワイマラナー犬のモンちゃん15歳の介護をしながら生地を探したりちくちく縫ったりの日々。
「娘にも手さげをつくってあげて『めっちゃかわいいやろ?』と聞くんですけれどあんまり興味ないみたいで。色が地味だったりするからかなあ」そう藤田さんが言うと
「いやー、そんなことない、かわいいですよ。やっぱり違うなあって思います」と
渡邉さん。こんどぜひ見せて欲しい!
最後にもうひとつ、お伝えしておきたいことがあります。藤田さんのバッグ、どうしてもステッチや布合わせが目を引きますが、持ち手がとても持ちやすい角度につけられていたり、洗えばそれなりにいい感じになる素材が選ばれていたり。物を入れても安定感があり、日常使いに便利。ちゃんと実用的につくられていたりもするのです。だからどんどん使っていただければと思います。
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第1話で紹介した斜めがけバッグについて、「オーダーの場合ハンドルの長さを10㎝伸ばすことができる」と紹介しましたが正しくは+7㎝でした。訂正してお詫び申し上げます。