特集「もったいない展」を開きたい イオギャラリー
第2回 自分が欲しいものを作りたい
2枚の四角に、2本の持ち手がついただけのシンプルな形の布バッグですが、とにかく大きい。大きい物だと50㎝×50㎝を越えます。
  • 生地はウールなど冬物が中心。あまり布やサンプル生地なので、1種類の布からできる手さげは1~2枚です。
  • ストールのようにおしゃれのアクセントになっています。元気に歩けばいっしょに元気に揺れて、寒い冬も楽しい。
ふつうには売っていないバッグ
 今せっせと作っているのは大きなバッグ。以前にデザイナーのダニエラ・グレジスさんにいただいたプレゼントがきっかけになっています。プレゼントはとっても大きなさやに入った、飾りにもなるような豆で、それをとおーっても大きな布バッグにがさがさっと入れて、ダニエラさんのところで働いている日本人のスタッフが帰国する時に持ってきてくれたの。「このまま渡してね」って。持ち帰るのもたいへんだったと思いますけど(笑)、えっさっさって、かついで持って来てくれました。その袋が、服や布などをどさどさっと入れてショップと事務所を往復する時にとても便利で重宝だったんです。持ち手が長いから斜めがけにするんですけど、そうするとたくさん詰めて運べる。私は小さいから、歩いているとパンパンの袋がアリとかハチのお尻みたいになるんですけれど、でもなんだか楽しいんです。
 手さげは好きでたくさんもっているけれど、ちまちましたのは案外ダメ。ひとそれぞれのかわいいという感覚があって、私も好きなものを「かわいい」というけれど、かわいらしげなのは苦手。体は小さいけれど、大きなものが好き、というのもあります。
 それで作るならあそこまで大きくなくていいけれど、ふつうには売っていない、できるだけ大きな袋を作ろうと思ったんです。それなら私も欲しい。あまり布と言ってもうちの場合は、一般の家庭ではあまらない大きさのものがあるので作れます。生地の幅がいろいろだから同じサイズにはならないけれど、なるべく大きく裁断して、肩にかけられるように長めの手をつけて。そういうの、自分でいざ作ろうと思うとなかなか作れないものなんじゃないかと思います。手さげとして使ってもらってもいいし、エコバッグや洗濯物を入れるバッグとして使ってもらっても。長く使ってもらえると思います。
感じよく仕上がるかどうかは、最後の大橋の洗濯にかかっています。洗濯機にかけて、パンパンと手で形を整えて自然乾燥。
洗うとニュアンスがでる
 布は、たとえばこれは袖なしジャケット用のヘリンボーンの生地。これは巻きスカート用のサンプルですね。オーバーコート用にサンプルをもらって、いいなあと思っていたんだけど生地の発注が遅くて売り切れてて実現しなかったものもあるし、カットソーのTシャツにしようと思ったけど、取り寄せてみたら色が明るくてやめて、でも手さげにするとよさそうだから今回使うことにした生地もあります。これなんか触るとふかふかとすごく気持ちいいでしょう、洗うとさらにくにゃくにゃっとニュアンスが変わってよくなるんじゃないかな。
 作業は私が布を裁断して見本を縫って作って感じをスタッフに伝えて、時間のある人が縫って、最後に私が洗って完成、というのが多いですね。新品できちんとしているのは気持ちが悪いというかつまらない。洗うことでニュアンスを変えられるじゃないですか。それが面白いんですね。何か好みに近いようになる気がします。昔はしわしわなんて考えられなかったけれど、今はね、すごくいいことに洗う時代になったんだと思います。今回はもともとがあまり布だから惜しまずに洗って試してみることができる。けっこういい感じに仕上がっているから売りたくなくなるかもしれません(笑)。
「残り布で何かをするのはふつうだけれど、それがかわいくないといや」は大橋の中で幼い頃からずっとつながっていることのようです。
よりかわいくないといや
「もったいない」というのは一時流行語のようになったけれど、私は「もったいない」が当たり前の育ちというか、年代なんですね。昔は布って貴重なもので、着物も最初はよそいきになってそれからどんどん落ちて普段着になって、ぞうきんとかはたきになって最後はその辺をぐしゅぐしゅってふいて捨てる。私の祖母はこの時代の人でした。私の時代は戦後。洋服の布なんてないし、既製服屋さんもない。私の服は母が着古しを仕立てなおして作ってくれました。そういう時代に育っているので、残り布でなにかするというのは私の中ではふつうだったんです。生活の中にごくふつうにあったもの。でも私はそれがよりかわいくないといやでした。
 例えば服をリニューアルする時、この服のここをほどいて身頃にして、袖には足りないからこっちのお古から取って、と母と工夫して。ちゃんといい具合にあわせるとかわいくなるんです。セーターもみんな糸になるでしょう。しましまっていうのももともとは紺色のセーター、またはグレーのセーターだったものをちょっと小さくなったらほどいて編み直してそうするんです。しましまにすると倍の大きさになるから。でもそれも色あわせや縞のぐあいでよりいい感じになるんですね。すると嬉しくて。
これもダニエラさんにもらったプレゼントにかけてあった切れはしの布で作ったブレスレット。おだんご結びを繰り返して作るのです。これはカシミヤの布みたいで、洗ったりするうちにフェルトっぽくなってきました。つけているとダニエラさんの元気をもらえている気がします。ダニエラさんには、たくさん刺激とかヒントをもらっています。
赤い紐で作ったブレスレット
 ずいぶん前だけどイタリアのベルガモにダニエラさんの取材に行った時に、ダニエラさんにプレゼントいただいたの。それが赤い布を細く裂いた紐でしばってあったんです。かわいくって。私も何かお返しせねばと思ったんだけれど、何も持ってなかったんです。それでその赤い紐を結んでおだんごを作って、ブレスレットみたいにしてさし上げたの。そしたらすごく喜んでくださったんです。これはダニエラさんに毎度頂くお土産に結んである紐で作ったブレスレットです。
 そういうのってちょっとしたきっかけがあって、ほんとうにもったいないからと出発するほうがうまくいって、構えて布を買ってやらなくちゃいけないとなるとたぶんうまくいってないと思うんです。残りもの、余りもののほうが触発される。切れはしだから心置きなくなんかにできるって思えるからでしょうかね。自分が年齢が上になってるから、ちょっとおばあさんのもったいないにつながっているのかもしれないけれど、若いときもまあもったいないが好きだったかもしれません。
 
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