あさって18日から始まる竹崎万梨子さんのストール展。第2話ではまとうと元気が出る色のストールを紹介していきたいと思います。染める色やデザインは、品種や個体ごとに違う羊毛の個性を生かすことをイメージして決めていくそう。セーターのようにはおるれるものから、アクセサリーのようにちょこんと首元にあしらうものまで、サイズや厚さのバリエーションもいろいろ。20点ほどが並びます。これからの冬をずっといっしょに過ごせるストールとの出会いがあると幸いです。
スコットランド北部・シェットランド島に育ったシェットランドシープの羊毛でつくったストールです。トレンチコートなど英国のトラッドな装いに似合う深い赤、緑に染めましたが、顔うつりのよい澄んだトーンを心がけたそう。
(左・右上)赤、緑ともにフラットでカジュアルな平織りと、平織りに比べ生地厚な綾織りの2種類があり、サイズは55×220㎝前後。2重巻きにして結んだり端をおろしたり、肩にはおったりといろいろに使いやすいサイズです。
(右下)シェットランドシープは柔らかく弾力とぬめりがある毛質が特徴。それを引き出すため空気を含む糸になるよう意識して紡いだそう。つやっと仕上がった糸、澄んだ色というのがわかります。
「エネルギッシュなオレンジをつくりたかった」と竹崎さん。赤に近いオレンジから黄色に近いオレンジまで羊毛を7色に染め分け、それをざっくり混ぜながら糸を紡いで織ったストールは、鮮やかかつ深みのある色あい。
(上)サイズは69×210㎝。空気を含みふんわりとしたストール。羊毛は弾力、はり、ぬめり感が特徴のチェビオットです。フリンジの端に残した紺の導き糸(経糸を織機にかける時に使う)も魅力的。
(中)幅を広めに織ってあるので、写真のように肩を覆ったりセーターのように上半身を包んでも。
(下左)7色に染め分けた後、ざっくりと混ぜながら糸を紡ぐのだそう。
(下右)経糸用に糸を巻き取り、織る準備をしているところ。
織ったものに名前をつけることをめったにしない竹崎さんが「星空」と呼んでいるネイビーのストール。羊毛は上のオレンジと同じチェビオット。チェビオットはアランニットのほかツイードの生地に使われることから、白いネップを混ぜツイードらしい表情を出しました。
(左上)量端を背中に回して結んでも動きが出ていい感じです。
(右上)ラフに2重巻きにして両端を手前に。
(左下)羊毛を4色のネイビーに染め、それらを混ぜながら紡いだ糸を使っているので光が当たると奥行きのある色あいに。だから「星空」。平織り(サイズ58×216㎝)と綾織り(サイズ54×230㎝)の2種類。写真は綾織り。
きりっと深い黒のストールです。モンゴルに生育する羊・モンゴリアンメリノは高地に耐えられるよう細い毛が密集していますが、細い毛はしっかり暖かいだけでなく、きれいに染まるそう。その性質を生かして深く染めることができました。72×234㎝と大判。幅も広めなのでまとったり巻いたりいろいろに装うことができます。
(左)2重巻きにしてもたっぷり。a.の
切りっぱなしワンピースと大人っぽいコーディネート。
(右)触るとなめらかでもっちり。片方の端に白い導き糸(経糸を織機にかける時に使う)を残し、モダンに仕上げています。
羊毛の女王と言われるブルーフェイスレスターをローズマリーで染め、ナチュラルな白とブルーに染めたシェットランドを少しずつミックス。ライトグレーの、氷をちょっとあたたかくしたような色に仕上がったストール。「フレッシュなローズマリーを譲っていただいてたくさん使いました。染めているときほのかに香って気持ちよかった」と竹崎さん。
(上)なめらかで光沢があり、ふんわりしてとてもやわらかな肌触りにうっとり。サイズは綾織りが60×217㎝、平織りが56×206㎝。
(下)糸を小管に巻いて緯糸の準備。「こうして何本も作ります。繰り返しの作業ですが、好きなプロセスです」。
シェットランドシープでつくったストールは、ちょっとグリーンがかった黄色です。片方の端が黄色とネイビーの杉綾織りになっているのは、黄色の糸が少し足りなかったからだそうですが、偶然が結果的におしゃれなアクセントを生み出しました。
(上)薄手で柔らかいので首元に巻きやすい。コートの襟の中に入れても。45×196㎝。
(下)これも5色の黄色に染め分け、それをざっくりと混ぜて糸を紡ぎました。下は羊毛を染め手でカード(繊維の方向を揃える)したふわふわの状態、上は紡いだ糸。布に表情を出したくて強めに撚ってあるそう。
オレンジとベージュのギンガム。つけた時に顔色が明るくやわらぐよう色を選んで染めています。素材のメリノウールは柔らかく肌触りがいいだけでなく、弾力があるのも特徴ですが、このストールに使ったピットアイランド産の原毛には特に力強さを感じたと竹崎さん。「南大西洋の孤島でオーガニックの餌を食べて育つからでしょうか」と思いをはせます。
(左)写真のストールは84×170㎝。巻きやすい厚みで、ふんわりボリュームがあります。対角線を使って巻くと端がとがって軽やかに。長めの84×197㎝もあります。
(右上)経糸を織機にかけたところ。これに緯糸を交差させ格子柄にしていきます。
(右下)織り終えたあと、糸のしまつをします。
ネイビーとグレーの千鳥格子は、トラッド好きの竹崎さんにとって定番的存在。昨年に続き今年もつくりました。トレンチに、テーラードジャケットに、シンプルなニットに。男性にも似合います。
(左)2重にしてきゅっと巻くとこれぐらいのボリューム。イオグラフィックのスタッフ髙橋が着ているのはa.の
「製品洗いジャケット(S)」を洗濯機で洗ったもの。小柄な髙橋にちょうどのサイズに育ちました。
(右上)2枚つくりましたが、工程最後の縮絨のかけ方で、目のつまり具合や、ストールの雰囲気が変わってきます。右(36×186㎝)、左(40×176㎝)。
(右下)ネイビーは染料で染めていますが、グレーはナチュラルカラーのままの糸。この千鳥格子の他、ネイビーとベージュ系のナチュラルな糸で織ったギンガムチェックのストールもあります。
赤と白の綾織り、トラッドな印象のマフラーサイズの1枚です。レースを編むのに使うシェットランドシープの子羊の貴重な原毛からつくりました。くるくるっとした巻き毛でとても繊細。原毛の持ち味をこわさないよう、ていねいに手仕事を重ねたそう。薄手ですが縮絨をかけているので暖かい。
(左)31×155㎝。こんなふうに2重巻きにしたり、コートの中に入れたり。
(右上)織りはじめたところです。1話で紹介した小さな白のストールと同じ糸を使っています。
(右下)甘くない赤に仕上がっています。エネルギーがあるというか、毛先がちょっと跳ねている感じがします。
鮮やかなグリーンのチビマフラーは、メリノウールを細い糸に紡いで織りました。柔らかくて肌になじむつけごこち。アクセサリーやスカーフのようにつけっぱなしでもいいように、とイメージしてつくりました。
(左)サイズは24×158㎝。紺や黒に映えます。
(右)透明感のあるグリーン、小さいけれど、寒い冬に気持ちを明るくしてくれる存在です。
※今回展示されるストールの価格は¥38,000~¥150,000(税抜)を予定しています。
さて、来年はひつじ年。先日知ったのですが、2015年のお年玉付き年賀はがきの羊はマフラーを巻いています。ひと回り前、2003年の羊は編み棒を手にしていて、そのマフラーが12年かけてようやく編み上がったのだそう。羊の表情も真剣な顔から満足そうな顔に変わっています!
イオグラフィックの特集記事、今年はこれで最後となります。1年間ご愛読ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします!
取材:田中真理子