2017年もいろいろな展示を開催、そのつどたくさんの方にお運びいただいた東京・駒沢の
イオショップ&ギャラリー。今年そのラストを飾るのは、
竹崎万梨子さんのストール展です。
首元に巻き、体を包めば気分が上がり、寒空でもどこまでも出かけたくなる。竹崎さんならではの、原毛の魅力を生かしたあたたかなストール、鮮やかな色のストールが並びます。
竹崎さんにはこれまでも展示をしていただき、そのたびにお話を伺ってきましたが、いつも変わらず伝わってくるのは「エネルギーのあるものをつくりたい」という思いです。
それぞれの土地の匂いをまとい、枯れ草をひっかけたままの原毛の、包みを解くことからはじめてストールまで仕上げるものは、自分が手を加えることでナチュラルなエネルギーをそこなわないよう心がけて。色をつけるときは自然素材のエネルギーに負けない色になるよう、色がその力を発揮できるよう繊細な計画をして。
今回つくってくださったストールからは、そんなぶれない気持ちがこれまでにまして伝わってきます。特にそれを強く感じたのが、大判の4枚のストールでした。
イギリスの羊、ウィリッシュマウンティンの深くて明るいこげ茶のストール。「大判にしたくなるエネルギーがあった」というシェットランドを使った大胆なクロスパターンのストール。「空飛ぶ羊」と呼ばれるモンゴルの羊の原毛でつくった、ナチュラルホワイトの雨をも弾くストール。そして同じくモンゴルの、乾いた土や草まみれだったヤクの原毛から生まれたストール。
糸をつくり、織る過程ではさまざまな試行錯誤があるに違いありません。でもその結果完成したものはシンプルでストレート。大胆かつ洗練されているだけでなく、身を包むと落ち着くという力も備えています。竹崎さん、何か心境の変化があったのでしょうか? それともこれまでのキャリアの積み重ねの結果でしょうか? この特集担当、大事なところを聞き逃してしまいました。
さて今回は40枚ほどのストールを展示させていただく予定ですが、なかには初めて使う原毛や、いつもとは違った感じに糸を紡ぎ、織ったストールもあります。
例えばこれは、ホワイトヤク。ヤクといえばこげ茶やグレーと思っていた竹崎さん。こんな色もあるんだと驚き、その手触りにもひかれたと言います。例えて言うならカシミヤ。とても柔らかくなめらかな素材を生かし、スカーフのようなストールに仕上げました。きりっとしているような、とろんとしているような白は顔映りもきれいです。
こちらは、ニュージーランドの孤島ピットアイランドで、オーガニックの草だけを食べて育つメリノ羊の原毛を使っています。レースに使われるほど繊細なシェットランドの子羊の白を少し合わせて糸を紡いで織りました。とてもいい色。ふわっとした弾力も魅力です。
くりくりっとした巻き毛のブルーフェイスレスターは、竹崎さんが好きな羊毛のひとつ。これまでは細く紡いでいたのですが、今回は太めの糸に紡いで、ボリューム感を出してみたそう。
滑らかで光沢があり、「羊の女王」とも呼ばれるブルーフェイスをダイレクトに堪能できる贅沢なストールになりました。少し重さもあるので一回巻ですとんとたらすととてもきれい、と竹崎さん。ゴージャスですが、デニムにもよく似合います。そしてこうしてみていくと、自然界の白って本当に多様なのだと感じられます。
もちろん今回もあざやかな色の「首元にちょこんと元気」シリーズは健在。なかでも新鮮なのはオレンジで、モデルをしてくださった竹谷さんもイオグラフィックのスタッフたちも思わず手がのびました。
オレンジは3色ありますが、そのどれもがあらかじめ染め分けた6色のフリースを合わせて糸を紡ぎ織っているので、色に奥行きがあります。おもしろいのはつけてみると、どれが自分のオレンジかはっきりとわかること。マリーゴールドか、ひまわりか、ダリアか?(これは特集担当の勝手な命名です) ぜひショップ&ギャラリーでご試着ください。竹谷さんは撮影の日に着ていらしたブルーのセーターとマリーゴールドがぴったりでした。
グリーンもあります。「グリーンは“森のグリーン”と“若葉の頃のグリーン”の中間を、と思って色をつくった」そう。そんなお話を伺うと身につけるのがいっそう嬉しくなります。
「ちょこんと元気シリーズ」は首に2回ぐるぐるっと巻くと結び目が感じよくはねるような長さです。ブルーもおつくりしているのですが、ここでご覧いただくのは、ボリュームのあるストール。幅も広く、少し長くなっています。きりっとしてエレガント。男性の方にも巻いていただきやすいサイズです。
特集第1話はここまでで、ストールのご紹介は第2話に続きます。2話では、竹崎さんが製作中に撮影してくださった写真もたくさんご覧いただこうと思います。ご期待ください!