この特集コーナーでa.やA.の服を紹介させていただくのは「2013年春夏」、「2013～14年秋冬」に次いで３シーズン目になります。いつも記事をつくる前に、新しい服を事務所に見に行きます。今回は寒い日が続く１月中旬、全国各地で始まる展示会の少し前でした。
　毎回「どんな服ができたのかな？」と楽しみなのですが、今年の春夏ものはなんだかとても新鮮！　オリジナルのプリント柄、ギンガムチェック、オレンジや紫、そして白。見たり触ったりしているうちにコートを脱いででかける季節がとても待ちどおしく思えてきました。そんなわくわくする2014年春夏の新作について４話にわたってお伝えします！


　最初にご紹介したいのは初登場のオリジナルプリントで、大橋がずっとつくりたいと思っていたのがようやく実現したものです。これまで子供用パジャマや着物のプリントはてがけたことがあるけれど、大人の服は初めて。記念すべき第１作に選ばれたのはシンプルな輪郭の花でした。
「大人らしくて清潔感があり、a.だけでなくメンズのA.にもいいプリントを」と考えていたときに思い浮かんだ４弁の花柄。実は大橋が以前に描き、ノートやリネンのトートバッグに登場しているもので、本人曰く「理由はないけれどすごく好き」。かわいいけれどあまくない、地味なようでいて印象的でどこにもない柄のように思いますがいかがでしょうか。
　生地にするにあたっては花の大きさや間隔をいろいろ工夫。紺と白を選んでプリントしてもらいました。新たに「HANA」という名前もつき、a.のワンピースと丸襟シャツ、そしてA.のボタンダウンシャツになってお目見えです！
　「イラストレーターなので、プリントものでオリジナリティーを出していけたらいいなと思っていました。今回実現して服づくりが一歩進んだように感じています。今後も新しいものを加えていきたいし、注目してもらえるとうれしい」と大橋。

　オリジナルプリントとともに今シーズン印象的なのがモノトーンのギンガムチェックの服です。ワンピース、定番の丸襟シャツ、幅広パンツ、そしてストール。これまでもたびたび登場しているギンガムですがこれだけ勢揃いしたのははじめて。シンプルなデザインの服からは、ギンガムチェックの爽快感がストレートに伝わってきて、着ると気持ちがしゃきんと明るくなりそうです。また、無地に慣れている人も違和感なく着ることができるのもギンガムチェックの魅力です。
　いずれも肌触りがよく、上質の綿ブロード素材ですが、ワンピースはそのままできちんと感を残しているのに対し、シャツとパンツそしてストールは製品洗いをしてカジュアルに仕上げています。もちろん自分でアイロンをかけたり手洗いすることも可能なので好みの風合いにして着ていただくことができます。

　オレンジと紫のタンクトップとカーディガンのセットアップも目を引きました。a.では初めての色です。でもこれは「色だけでなく、ガーゼのような手触りの素材に出会えたからかたちになった」と大橋。
　柔らかく編んだ天竺ニットを縫製し、製品洗いすることでオレンジや紫が肌になじむ風合いになっているのです。うれしいのはくしゃっとかばんに入れても問題ないのでエアコン対策にも、旅行にも便利なこと。
　どちらも黒やカーキと相性がよく、タンクトップだけ、カーディガンだけでも着られるし、カーディガンはストール代わりに使うこともできます。

　お気づきも方もいらっしゃると思いますが、第１話の服はすべて白い革靴をあわせて撮影しています。なぜかというといったんこの靴をあわせてみたら、もうもとには戻れないぐらいコーディネートが軽やかに、春の気分になれたからなのです。
　白の革靴を買ったりはいたりするのはなかなか勇気がいります。すぐに汚れてしまうのではないか、スニーカーでいいのではないか。でもこのすっとした鼻先の白い革の紐靴にはスニーカーには代え難いおしゃれ感があるのです。
　意外だったのはa.のどの服にも似合ったこと。黒のようにははけないかもしれないけれど、ちょっと特別と思いながらはくことも気持ちがあがってよさそう、と心を動かされています。足元を気遣う日があるのもちょっと大人ならではのぜいたく？　と。
　それでもちょっと心配で、長年シューズメーカーで仕事をしてきた知人に聞いてみたところこんなアドバイスがかえってきました。
「白い革靴は一度はくとだんだん楽しくなってやめられない、という方も多いんですよ。靴をおろす前に靴クリームを塗り、防水スプレーをすることで汚れをはじくことができ、汚れがしみ込みがちなキャンバスのスニーカーよりもメンテナンスがしやすいと思います」。

　第１話の最後に人気の帆布トートに新しく仲間入りした大きなバッグを紹介します。明るい赤と紺、これも元気な色なのです。
　丸底でバケツのようにたくさんものが入る「帆布バケツショルダーバッグ」は大橋の希望で作られることになりました。
「大量の荷物も肩にかければ小さな私でも『えいっ』と持ち運べて便利。だからつくりましょう」ということです。重さに耐えうるよう、これまでより少し厚い帆布を使い、ショルダーも幅７㎝と太くしました。そうしたらこれが“たすき”のようでバッグを背負うと元気が伝わってくる感じ。存在感のある赤や紺がコーディネートのアクセントにもなっていい感じなのです。このバッグはa.ではなくイオグッズの商品。どうやらブランドのカテゴリーを越えて色が楽しいシーズンのようです。