“足なり”の木型
「コミュニケ」の靴のいちばんの特徴は“足なり”の木型にあります。靴底をひっくり返して他の靴と比べてみるとわかるのですが、「コミュニケ」の靴底は内側にカーブを描いています。これが“足なり”。人間の自然な足のかたちに近く、はきやすさの要になります。
嶋村さんは自分で試して、これ、と感じた木型を選び、さらに改良を加えて少し甲を高めにしたものを使っています。また、グッドイヤーウエルテッドという製法を用いて中底と本底の間にコルクを挟み込むことで、より足触りがよく疲れにくい構造に。表革もインナーもはき心地がよく、品質が安定している革を厳選して使用しています。
「“足なり”の靴はその曲線を出すのがむつかしく、技術も時間も必要です。そのため靴づくりの現場ではどんどんまっすぐの靴が多くなる傾向なんです。そのほうが一見すっきり見えるので女性の方には喜ばれたりもする。足には負担なんですけれども。だからこそ“足なり”というだけでなく、デザイン的にも魅力のある靴を作りたいですね」(嶋村さん)。
ごついけれどやさしい
「僕は女性らしい服装にちょっとごついぐらいの靴をあわせるほうが女性らしさが出るというか好きです」と語る嶋村さんの靴は靴底の周囲(コバ)が外にあらわれ、ヒールもがっちり。一見かわいいよりはかっこいい。でもそのなかに実はやさしさもそなえています。流行を越えた丸み、革の切り替えの柔らかなカーブ。そして控えめなメダリオン(穴飾り)のデザイン。いろんな服に似合うよう、飽きのこないよう、ちゃんと意匠に秘密が隠されているのも魅力です。
ただ、嶋村さんは職人ではありません。実際パターンをひいたり、手を動かして作業をする人たちがいてはじめて「こんな靴がつくりたい」がかたちになって表れるのです。同じ木型を使い、同じ製法でつくっても職人さんによって仕上がりが全然違ってくるともいいます。特集「コミュニケ」の靴、第2話では嶋村さんが信頼を寄せる靴職人さんたちを取材。その手技にこだわる理由やタグに記した「Made in Tokyo」の意味をご紹介します。お楽しみに!