特集 「コミュニケ」の靴
第1話 どこにもない靴
  • 黒の紐靴はフォーマルな装いをしたい日からデイリーウエアまでカバー。パギンスを短めにして足元を強調したはき方です。
  • デニムにあわせたのはこの7月から受注がスタートする茶色の紐靴です。黒に比べ柔らかな印象ですが、りりしい感じは健在。
  • 一直線の穴飾り(ストレートチップ)がポイントの紐靴。サイズは22.5cmから0.5cmきざみで25cmまで。¥56,190+税
  • メンズライクなワンストラップシューズは、ワンピースの着こなしをきちんとおとなっぽく仕上げてくれます。
  • 白い幅広パンツやブルーのソックスとのコーディネート。秋から冬はいろいろなカラーのタイツと組み合わせるのも楽しみです。
  • 丸みを帯びた爪先、曲線を描く切り替えや穴飾りが紐靴よりカジュアルな印象。サイズ展開は紐靴と同じ。¥56,190+税
はきやすくておしゃれ
 「コミュニケ」の靴はストラップと紐靴の2種類。ショップでサンプルを履いていただき、一足ずつ受注生産をしています。浅草の靴職人の手技でていねいに仕上げられ、お客様の手元に届くまで2~3ヶ月。実際に履けるまで時間がかかるし、お値段もけっこうする。だから飛ぶように売れている、わけではありません。でも「ようやく思い描いていた靴にであえた」とおっしゃってくださる方もいます。「どこにもないしっかりしたつくりで、はき心地ばつぐん」、「どんなおしゃれも受けとめてきちんと仕上げてくれる」そんなうれしい感想をいただいています。
 今回はスタッフがa.の服とコーディネートしてはいてみました。どうでしょうか。たしかにカジュアルなデニムやワンピースがきりりと見えます。
 企画デザインをしているのは、故高田喜佐さんの靴ブランド「KISSA」で長年仕事をされてきた嶋村丈二さん。靴が大好き。靴のことなら何でも知っている靴博士のような方で、これまでの経験をすべていかして「コミュニケ」にたずさわっておられます。嶋村さんが思い描くのは愛着を持って履いてもらえる靴。つまり丈夫ではきやすく、おしゃれであること。結果出番が多くなるのでメンテナンスしやすいことも大事な要素だと言います。
  • “足なり”の形をした靴底。減りやすい踵部分以外は革を使用。「革は自然な弾力があり、呼吸するので通気性があって蒸れにくい。靴底にベストな素材」と嶋村さん。滑るのが気になる方は一部ゴムに変更も可能(有料)。(サンプルのため底の一部がざらっとしています)
  • 「COMMNIQUÉ」は嶋村さんが大好きなアメリカのバンドのアルバムタイトル。フランス語で意思表明の意味も。下に小さく「Made in Tokyo」。
  • 紐靴は黒と茶の2色。“足なり”の靴を選ぶときは試しばきし、歩いてみて最初から心地よいのがジャストサイズ。型くずれもしません。
  • 紐靴を真横から見た写真です。爪先の捨て寸(長さ)を必要以上に取らず、丸みを帯びたデザイン。しっかりした靴底です。
  • 真後ろから見た写真です。足を入れる際にほつれないよう、革の縫い合わせはセンターからずらして。革を何層も重ねて作るかかと。茶色は自然なカラーグラデーションを活かしています。黒はワントーン仕上げ。
  • 穴飾りは、穴の大きさや間隔で印象がずいぶん違います。これは控えめ。紐をきゅっと結べるよう、両サイドの革の間隔を狭めにデザインしています。
  • 真横から見たストラップシューズです。重さは2足で約900g。手に持つとずしりとしますが、足のサイズがあっていれば重く感じることはありません。長く歩くときは振り子の理屈で、重めの靴の方が足を踏み出しやすい。
  • 真後ろから見た写真です。甲高の木型なのでストラップも足にフィットします。
  • かっちりしたつくりですが、ピンキングの縁取りやウイング(羽根)の形の切り替えなど、華やかな印象。コバの目もきれい。
“足なり”の木型
 「コミュニケ」の靴のいちばんの特徴は“足なり”の木型にあります。靴底をひっくり返して他の靴と比べてみるとわかるのですが、「コミュニケ」の靴底は内側にカーブを描いています。これが“足なり”。人間の自然な足のかたちに近く、はきやすさの要になります。
 嶋村さんは自分で試して、これ、と感じた木型を選び、さらに改良を加えて少し甲を高めにしたものを使っています。また、グッドイヤーウエルテッドという製法を用いて中底と本底の間にコルクを挟み込むことで、より足触りがよく疲れにくい構造に。表革もインナーもはき心地がよく、品質が安定している革を厳選して使用しています。
 「“足なり”の靴はその曲線を出すのがむつかしく、技術も時間も必要です。そのため靴づくりの現場ではどんどんまっすぐの靴が多くなる傾向なんです。そのほうが一見すっきり見えるので女性の方には喜ばれたりもする。足には負担なんですけれども。だからこそ“足なり”というだけでなく、デザイン的にも魅力のある靴を作りたいですね」(嶋村さん)。
ごついけれどやさしい
 「僕は女性らしい服装にちょっとごついぐらいの靴をあわせるほうが女性らしさが出るというか好きです」と語る嶋村さんの靴は靴底の周囲(コバ)が外にあらわれ、ヒールもがっちり。一見かわいいよりはかっこいい。でもそのなかに実はやさしさもそなえています。流行を越えた丸み、革の切り替えの柔らかなカーブ。そして控えめなメダリオン(穴飾り)のデザイン。いろんな服に似合うよう、飽きのこないよう、ちゃんと意匠に秘密が隠されているのも魅力です。
 ただ、嶋村さんは職人ではありません。実際パターンをひいたり、手を動かして作業をする人たちがいてはじめて「こんな靴がつくりたい」がかたちになって表れるのです。同じ木型を使い、同じ製法でつくっても職人さんによって仕上がりが全然違ってくるともいいます。特集「コミュニケ」の靴、第2話では嶋村さんが信頼を寄せる靴職人さんたちを取材。その手技にこだわる理由やタグに記した「Made in Tokyo」の意味をご紹介します。お楽しみに!
 
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