ご自宅を訪ねて
今年の7月、大橋といっしょに掛井さんのアトリエ兼自宅にうかがう機会がありました。
『大人のおしゃれ8』で紹介させていただく掛井さんのアトリエの撮影に同行したのです。
撮影を終え、プライベートスペースでお茶をいただきながらうかがった掛井さんのお話はとてもおもしろいエピソードに満ちていました。
たとえば芸大を卒業して奨学金でフランスに留学する機会があったのに、フランス大使館の最終面接で面接官がテーブルに脚を投げ出していたのに納得がいかず「その脚をおろしなさい!」と言って落選した話。1960年代、まだ幼い息子たち3人を連れて家族ぐるみでメキシコの大学に赴任したときの話。60歳になる少し前、「やはりパリを見ておきたい」とバブルの時に得た収入をつぎ込んで1年あまり夫婦でパリで暮らしたこと。そのときのアパルトマンのマダムとの交流。ベルギーの、“まるで象のような”深い森の近くで半年過ごした時、冬から春への季節の移り変わりに感動した話。すまいを建て替える際に一時移り住んだ愛媛・長浜の家の隣がたまたま鉄工所で、そこに入り浸ってたくさんの作品がうまれた話……。
掛井さんはそのときそのとき五感をすまして未知のこと、どきどきすることをみつけては身を投じる。そして模索して彫刻や絵をつくりだすことをずっと続けて来られたようです。