素直に、具体的に、この本のための絵を
大橋の挿絵の仕事は絵本、詩集、エッセイとさまざまなジャンルに及びますが大きくふたつにわかれています。ひとつは他の方が書かれた文章にイラストを添えさせていただく場合。もうひとつが自分の文章にイラストをつける場合です。
他の方の文章と挿絵の関係は「むずかしくて楽しい」と大橋は言います。他の方の文章にイラストを、と依頼を受ける時はことばだけが大橋のところに届きます。こういう風にして欲しいといった注文はほとんどありませんが、文章の流れや読んでいる気分と違うものでは困ります。かといって文章に寄り添いすぎてもつまらない。まず最初にすることはそれを読んで自分の中でできるだけ素直に、具体的に絵を思い浮かべることだそう。
作者には会いたくないです。
「作者の方は文章を書きながらイメージを持ってらっしゃると思うからそれとあうかどうか、そのへんもむつかしいですね。作者に会えばうまくいくかというとそうでもないんです。私はたぶんけっこう人の好き嫌いがあって好きなら好きでその人に寄って行ってしまうし、嫌いだと描きたくなくなってしまう(笑)。どちらにしてもそれはこわいのでいただいた文章でかかわっていくのがいいのかな、とおもっています」。「がんばって描いても気に入らなかったかもしれない、としばらくその本が見られなかったりもする」という大橋。読む人のことも作者のこともものすごく考えてたいへん緊張する仕事のようです。
「でも、イラストを描く時は私の中に仕事の基本として前に描いた絵とは違うような、これはこれの絵としてなにか描ければすごくいいな、という気持ちがいつもあります。そして文章を読みながらどういうようにしよう、なにを拾い上げて行こうと考えているのはすごく楽しいことでもあるのです」。
会場には今回展覧会のポスターになった長田弘さんの絵本『ねこのき』(クレヨンハウス)をはじめ、草森紳一さんの『鳩を喰う少女』(大和書房)、矢野顕子さんの『わたしのにゃんこ』(徳間ジャパン)、谷川俊太郎さんの絵本『これは おひさま』『おしょうがつさん』(ともに福音館書店)、石津ちひろさんの詩集『あしたのわたしはあたらしいわたし』(理論社)など多くの方々とごいっしょさせていただいた原画とともに、出版された書籍も並ぶ予定です。ぜひ両方をごらんいただき、ことばとイラストのかかわりを感じていただければと思います。